世界の農法シリーズ#4「ザイ農法(西アフリカ・サヘル地方)」

世界の農法シリーズ

※画像はイメージです。

「雨が少なくても穀物が実る!?」――直径30 cmの“くぼみ”が砂漠を緑へ変える奇跡の水収穫術

干ばつと砂漠化が進むサヘルで農民が編み出した ザイ農法。硬い地面に穴を掘り、雨水と有機物を集めるだけで、ミレット(雑穀)やソルガム(モロコシ)の収量が3〜5倍に跳ね上がったと言われます。今回は「サヘルのツリーマン」と呼ばれるヤクーバ・サワドゴ氏の物語とともに、その仕組みと有事へのヒントをストーリー仕立てでお届けします。


1.シリーズ続編のごあいさつ

菌ちゃん農法(日本)→ニシン肥料農法(江戸)→地熱温室(アイスランド)に続く第4弾は、西アフリカ・ブルキナファソザイ(Zaï)岩盤のように固まった荒地を“再生”する水収穫型農法です。​

Point! 1 haあたり10,000個の植穴が雨水・堆肥を集中させ、乾季でも300 %超の増収が報告されています。​


2.ザイ農法とは?

2-1 誕生の背景
  • 起源は数百年前のモシ族の伝統技術と言われるが、1970年代の大干ばつで衰退。
  • 1980年代、農民ヤクーバ・サワドゴ氏が改良版ザイで荒地を再生し、2020年UNEP「地球環境賞」受賞

wiki参照:https://it.wikipedia.org/wiki/Yacouba_Sawadogo

2-2 仕組みのキモ
  1. くぼみ作り:直径・深さとも20–30 cmの穴を乾季に手掘り。1 m間隔で将棋盤状に配置。​
  2. 堆肥投入:牛糞・落ち葉を握りこぶし1杯/穴入れ、白アリが砕いて土を団粒化。​
  3. 雨水収穫:初雨時に穴が雨を受け止め、浸透率が裸地の5倍に。​
  4. 播種:ミレットやソルガムなど旱魃耐性穀物を3–5粒/穴播き。

3.手順を追ってみよう

Stepやることコツ
1植穴を20–30 cm掘る乾季に作業すると土が崩れにくい
2堆肥+木炭粉を投入窒素+多孔質炭で水分保持 UP
3走り雨を待つ穴に水溜まりが出来たら播種
4土で軽く覆土鳥害防止に枝で覆うと◎
5草木チップでマルチ蒸発抑制・有機物補給

4.ここがスゴイ!ザイ農法のメリット

  • 収量300 %アップ
    穴が水と栄養を集中させ、ソルガムは平均3倍、乾年は5倍の報告も。​
  • 土壌再生&植林効果
    白アリ活動で硬盤が砕け、ザイ穴に植えた樹木が30年で面積20 haの森に成長。​
  • 低コスト×省資材
    必要なのは労力と在来堆肥のみ。外部資材ほぼゼロ。​
  • 気候変動適応
    年間降雨300 mm以下でも生産可能で、サヘルの砂漠化対策「グレート・グリーンウォール」の柱技術。​

5.まとめ 〜“くぼみ”が呼び戻す命の連鎖〜

「一つの穴が雨を呼び、雨が森を呼び、森が人を呼ぶ」

ザイ農法は、水収穫・土壌改良・気候適応を同時に叶えるローテク×ハイインパクトな知恵です。労力は要すれど資材は不要――資源制約が増す現代にこそ輝く技術と言えるでしょう。

次回は、魚を育てながら植物が育つ「アクアポニックス」を予定!


参照文献・ウェブ資料

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