「肥料も農薬もいらない!?」微生物パワーで土が生き返る日本発のユニーク農法
「農業は大量の資材投入が当たり前」――そんな常識を覆すのが、長崎で生まれた 菌ちゃん農法。今回は、農業自衛隊が日頃お世話になっている Refarm の松井さん が実践・指導するこの方法を紹介します。

1. シリーズ開幕に寄せて
農業自衛隊では、世界の多彩な栽培技術を掘り下げる連載 「世界の様々な農法特集」 をスタートします。記念すべき第1回目は、国内でも注目度急上昇中の 菌ちゃん農法。
Point! 近年の肥料価格高騰や輸入依存リスクに対し、“資材ゼロで育つ作物” はまさに有事対応の切り札です。
2. 菌ちゃん農法とは?
2-1 誕生の背景
- 考案者は「菌ちゃん先生」こと 吉田俊道氏(長崎県佐世保市)。
- 1990年代、落ち葉や枝をたっぷり積んだ高ウネで糸状菌(カビの仲間)を爆発的に増やし、無肥料・無農薬でも野菜が健康に育つ ことを実証。
- 近年は都市住民向けに、深型プランターを用いた「ベランダ菌ちゃん」も広がっています。
2-2 仕組みのキモ
- 炭素リッチな有機物(落ち葉・枝・野菜くずなど)を50 cm前後まで層状に積む。
- 糸状菌が有機物を分解 → 菌糸が根まで伸び、養分と水をダイレクト搬送。
- 菌糸ネットワークが病原菌・害虫を抑制し、追肥も農薬も不要に。

3. 手順を追ってみよう
Step | やること | コツ |
1 | 深さ40 cm以上のプランター or 高ウネ区画を用意 | 水はけ穴を忘れずに |
2 | 枝→畑土→落ち葉→土→枯草→土の順で積層 | 「木質→土→草」のリズムがポイント |
3 | たっぷり灌水し、黒マルチや麻袋で覆う | 2〜3か月で白い菌糸が現れる |
4 | 苗を定植 | その後は追肥・耕起ほぼ不要 |
5 | 2〜3年後、落ち葉を上から追い足す | 「足すだけ」で土がさらに熟成 |



4. ここがスゴイ!菌ちゃん農法のメリット
- コスト激減
化成肥料・農薬ゼロ。資材費は従来の1/3以下に。 - 病害虫に強い
多様な微生物が害虫を遠ざけ、農薬いらず。 - 土壌が年々パワーアップ
有機炭素が増えて団粒構造が形成、水持ち◎。 - 小さな面積で高効率
1×2 mの高ウネで一家の葉物がほぼ自給可能。 - 都市防災×食料安保
ベランダ菜園でも応用でき、有事の備蓄菜園 として心強い。

5. 「有事対応力」こそ最大の魅力
日本の肥料三要素は約90%を輸入に頼り、物流が止まれば農業は直撃します。菌ちゃん農法は――
- 燃料・肥料・農薬ゼロ運用:供給途絶時も継続栽培が可能。
- 小面積・省スペース:庭先やベランダで自給菜園を構築。
- ローコスト:経済的ダメージが大きい災害時にも導入しやすい。
農業自衛隊としては、この活動を通し各地に “マイクロ菜園の防衛線” を築くことで、食料安全保障を高めるモデルケースと位置付けています。
6. まとめ 〜土と人を元気にする“菌ちゃん”スピリット
「土が変われば作物が変わり、作物が変われば人が変わる」 菌ちゃん農法は、低コスト・環境再生・有事対応 を同時に満たす希少な技術です。農業自衛隊は、全国の家庭菜園から大規模農地まで普及を後押しし、“備えながら育てる” 新しい農業ライフ を提案していきます。
次回は、世界の農法シリーズ#3「江戸時代のニシン肥料農法」を取り上げる予定です。ぜひ、お楽しみに!✨
