世界の農法シリーズ#10「オーストラリア発!乾燥にも豪雨にも強い「キーライン農法」とは?」

世界の農法シリーズ

画像出典:Wikimedia Commons

トマト士長
トマト士長

米先任!「雨を遅らせ、散らし、染み込ませる」って、農業でそんなコントロールできるんですか!?

ふふ、できるのじゃ。それがキーライン農法。地形を読み、水の流れを設計する、まさに“農の地形戦術”じゃな。

米先任
米先任
トマト士長
トマト士長

谷のカーブを起点に、溝と池と浅い耕しで水を操る…自然の力と調和してるであります!

うむ。豪雨にも干ばつにも強い。表土の流出を防ぎ、土の命を守る。まさに“守りの農法”よ。

米先任
米先任
トマト士長
トマト士長

しかも浅く耕して、炭素も蓄えるとは…未来志向の農法であります!

設計に手間はかかるが、更新は年1回。続ければ確かな力となる。これぞ戦略的持続性じゃ。

米先任
米先任

キーライン農法(Keyline Design)は、オーストラリアの農業技術者 P.A. イェーマンス(Percival Alfred Yeomans, 1904 – 1984)が1950年代に開発した等高線ベースの農地設計法です。谷地形の「キーライン」を起点に浅いサブソイル耕(キーラインプラウ)と溜め池・分水溝を配置し、雨水を「遅く・拡げ・浸透させる」ことで乾燥地でも土壌水分を維持し、浸食を抑えて有機物を増やすことができます。現在はパーマカルチャーや再生型農業の水管理基盤として東南アジアをはじめ世界各地に普及しています。


1.ごあいさつ

世界の農法シリーズ第10回は、オーストラリア発祥の キーライン農法

Point! 野外試験ではキーライン耕区の表層浸透水量が対照区より最大29 %増となり、夏期土壌水分が有意に高かったと報告されています。


2.キーライン農法とは?

2-1 歴史と文化

  • 1940年代末、イェーマンスはニューサウスウェールズ州「ヨーベル農場」で大干ばつと浸食に直面し、地形を活かした水循環法を考案。
  • 1954年『The Keyline Plan』を出版し、等高線を応用した全体設計とキーラインプラウによる深耕を提唱。
  • 1970年代以降、パーマカルチャー創始者 B.モリソンらが採用し、北米・欧州・アフリカへ拡大。

2-2 仕組みのキモ

  1. キーライン & キーポイント
    • 谷形斜面で凸→凹に切り替わる屈曲点(キーポイント)を通る等高線がキーライン。ここから放射状に耕線を描き、水を尾根側へ拡散する。
  2. キーラインプラウ(Yeomans Plow)
    • サブソイラー型の特殊爪で土を持ち上げ、通気孔と水平空隙を作り浸透路を確保。耕起深さは 30 cm 前後で反転しないため団粒構造を保持。
  3. 溜め池・分水溝
    • キーポイント上部に小規模ダムを設置し、満水時に分水溝で尾根へ雨水を導き畑全体に散水。

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3.手順(実装プロトコル)

Step作業要点・機材
1地形解析高低差図と歩測でキーポイントを特定
2キーラインマーキングレーザーレベルまたは A-フレームで基準線を墨出し
3キーラインプラウ耕爪間隔 45–50 cm・深さ 25–35 cm、年1回
4溜め池造成粘土芯で止水、越流部を芝貼り補強
5分水溝整備勾配 1:400〜1:800 で尾根側へ延伸
6モニタリング透水計・ドローンで浸透率と植生を年次評価

4.ここがスゴイ!キーラインのメリット!

  • 浸透率アップ
    BC 州試験で夏期土壌水分が対照区比 11–29 %高い。
  • 浸食防止
    USDA プロジェクトでランチの表土流出が 3 年で 50 %減少。
  • 炭素貯留
    サブソイル耕が根系を深層へ誘導し、土壌有機炭素が 5 年で 12 %増。
  • 機械・資材低コスト
    キーラインプラウ 1 台+GPS レーザーレベルで数十 ha を年 1 回更新。
  • パーマカルチャー統合
    果樹帯・放牧と組み合わせることで多層的な収益モデルを構築。

5.「有事対応力」

課題シナリオキーライン農法の対応メカニズム
干ばつ雨水を地下に貯留し土壌水分を平年比 +10 %維持
豪雨・浸食分水溝で流速を抑え、表土流出を 50 %削減
化学肥料高騰深根作物+微生物活性で窒素施肥 30 %カット報告
エネルギー制約耕耘は低馬力トラクターで可、頻度は年 1 回

6.まとめ

キーライン農法は、等高線解析・浅層深耕・分水溝設計を組み合わせて「雨を遅らせ、散らし、染み込ませる」ことで乾燥・豪雨の両極端に強い農地を作る設計手法です。水管理・炭素貯留・土壌保全を同時に高めるこのアプローチは、気候変動下でのレジリエント農業デザインとして世界的に採用が進んでいます。


参考文献・ウェブ資料

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