世界の農法シリーズ#5「アクアポニックス」

世界の農法シリーズ

「魚と野菜が共生!?」――魚を育てながら野菜が育つアクアポニックス

水槽で育てた魚のフンが植物の養分となり、植物が根で水を浄化して魚にきれいな水を返すアクアポニックスは、まさに小さな生態系を丸ごと再現した閉鎖型農業システムです。水使用量は土耕の90%減、化学肥料ゼロで同時に魚と野菜が収穫できるため、都市の屋内施設から宇宙基地の自給システムまで応用が進んでいます。​


1.シリーズ再開のごあいさつ

菌ちゃん農法 → ニシン肥料農法 → 地熱温室 → ザイ農法に続く第5回は、最新循環型技術 アクアポニックス。水と資源が限られる将来の有事にも強い「水産×農業ハイブリッド」です。

Point! 1 Lの水を最大10回循環利用し、同面積当たり野菜生産量は土耕の2倍前後との報告も。​


2.アクアポニックスとは?

2-1 誕生の背景
2-2 仕組みのキモ
  1. 養殖槽:ティラピアやナマズなど雑食性・高耐性魚を飼育。
  2. メカニカルフィルター:固形フンを沈殿・除去。
  3. 生物濾過槽:バクテリアがアンモニア→亜硝酸→硝酸塩へ酸化。
  4. 水耕ベッド:野菜が硝酸塩を吸収、生長と同時に水を浄化。
  5. 循環ポンプ:24 h 低電力で水を循環させるクローズドループ。

3.手順を追ってみよう

Stepやることコツ
1養殖槽&タンク設置魚密度は20–40 kg/m³で管理(UVI基準)
2固形分離フィルター1時間あたり水量の半分を処理するサイズを確保
3バイオフィルター投入pH 6.8–7.2で硝化菌活性を最適化
4水耕ベッド組立NFTやメディアベッド、深水培(DWC)を選択
5種まき・稚魚放流同期させると栄養バランスが取りやすい
6水質モニタリングDO5 mg/L以上、NH₃ < 1 ppm、NO₂ < 1 ppm

4.ここがスゴイ!アクアポニックスのメリット

  • 省水・省資材
    循環式で水使用量90%減、化学肥料・農薬ゼロ。
  • ダブルインカム
    同じ施設で魚と野菜を同時出荷でき、面積当たり収益が高い。
  • 都市・離島・砂漠に適応
    土地が狭い都市屋上や砂漠の閉鎖温室でも導入実績。
  • 教育・観光効果
    視覚的に循環を体感できるため、学校や観光農園で人気。​

5.「有事対応力」こそ最大の魅力

  • 閉鎖循環=断水に強い:停電時もソーラーポンプで小規模稼働が可能。​
  • 局所生産・局所消費:物流寸断時でも屋内でタンパク質+ビタミンを同時確保。
  • 宇宙開拓シナリオ:火星基地用ライフサポートに採用検討中。

6.まとめ 〜「水を回せば命が回る」循環スピリット〜

「魚が肥やし、野菜が浄化し、人が守る」

アクアポニックスは、水資源節約・食料二重生産・有事対応を兼ね備えた次世代型農法です。都市の空きビルから離島の防災拠点、さらには宇宙コロニーまで活躍の舞台は無限大


参照文献・ウェブ資料
タイトルとURLをコピーしました