「魚と野菜が共生!?」――魚を育てながら野菜が育つアクアポニックス
水槽で育てた魚のフンが植物の養分となり、植物が根で水を浄化して魚にきれいな水を返すアクアポニックスは、まさに小さな生態系を丸ごと再現した閉鎖型農業システムです。水使用量は土耕の90%減、化学肥料ゼロで同時に魚と野菜が収穫できるため、都市の屋内施設から宇宙基地の自給システムまで応用が進んでいます。
1.シリーズ再開のごあいさつ
菌ちゃん農法 → ニシン肥料農法 → 地熱温室 → ザイ農法に続く第5回は、最新循環型技術 アクアポニックス。水と資源が限られる将来の有事にも強い「水産×農業ハイブリッド」です。
Point! 1 Lの水を最大10回循環利用し、同面積当たり野菜生産量は土耕の2倍前後との報告も。
2.アクアポニックスとは?
2-1 誕生の背景
- 原型は古代アステカの浮畑チナンパともされるが、現代的システムは1970年代のNASA「生物再生型ライフサポート」研究が源流。
- 1990年代、米ヴァージン諸島大学(UVI)が商業化モデルを確立。
- 2000年代、ウィル・アレン氏の NGO Growing Power が都市型食料運動として拡大。
2-2 仕組みのキモ
- 養殖槽:ティラピアやナマズなど雑食性・高耐性魚を飼育。
- メカニカルフィルター:固形フンを沈殿・除去。
- 生物濾過槽:バクテリアがアンモニア→亜硝酸→硝酸塩へ酸化。
- 水耕ベッド:野菜が硝酸塩を吸収、生長と同時に水を浄化。
- 循環ポンプ:24 h 低電力で水を循環させるクローズドループ。

3.手順を追ってみよう
Step | やること | コツ |
1 | 養殖槽&タンク設置 | 魚密度は20–40 kg/m³で管理(UVI基準) |
2 | 固形分離フィルター | 1時間あたり水量の半分を処理するサイズを確保 |
3 | バイオフィルター投入 | pH 6.8–7.2で硝化菌活性を最適化 |
4 | 水耕ベッド組立 | NFTやメディアベッド、深水培(DWC)を選択 |
5 | 種まき・稚魚放流 | 同期させると栄養バランスが取りやすい |
6 | 水質モニタリング | DO5 mg/L以上、NH₃ < 1 ppm、NO₂ < 1 ppm |
4.ここがスゴイ!アクアポニックスのメリット
- 省水・省資材
循環式で水使用量90%減、化学肥料・農薬ゼロ。 - ダブルインカム
同じ施設で魚と野菜を同時出荷でき、面積当たり収益が高い。 - 都市・離島・砂漠に適応
土地が狭い都市屋上や砂漠の閉鎖温室でも導入実績。 - 教育・観光効果
視覚的に循環を体感できるため、学校や観光農園で人気。
5.「有事対応力」こそ最大の魅力
- 閉鎖循環=断水に強い:停電時もソーラーポンプで小規模稼働が可能。
- 局所生産・局所消費:物流寸断時でも屋内でタンパク質+ビタミンを同時確保。
- 宇宙開拓シナリオ:火星基地用ライフサポートに採用検討中。
6.まとめ 〜「水を回せば命が回る」循環スピリット〜
「魚が肥やし、野菜が浄化し、人が守る」
アクアポニックスは、水資源節約・食料二重生産・有事対応を兼ね備えた次世代型農法です。都市の空きビルから離島の防災拠点、さらには宇宙コロニーまで活躍の舞台は無限大
参照文献・ウェブ資料
- Go Green Aquaponics 基礎解説Go Green Aquaponics
- University of the Virgin Islands Aquaponics Programバージン諸島大学
- UVI 研究データ(収量・水利用)バージン諸島大学
- Happy Eco News「90%節水」Happy Eco News
- NASA 技術移転レポートNASA
- Civil Eats(Growing Power の事例)civileats.com
- Encyclopedia of Milwaukee(Growing Power解散後)Encyclopedia of Milwaukee
- Grand View Research 日本市場予測グランドビューリサーチ
- V-Plus Agritech 日本進出ニュースV-Plus Agritech
- The Sun 火星アクアポニック実験記事The Sun